King of Thorn いばらの王

プロダクションノート

劇場アニメ化に至る道

2002年10月から2005年10月にかけて、月刊コミックビームにおいて連載された岩原裕二先生によるマンガ「いばらの王」。2008年アメリカ図書館協会推薦グラフィックノベルに選出されるなど、ワールドワイドに評価されている同作を劇場アニメーション化したのが『いばらの王 –King of Thorn–』だ。
サスペンス、サバイバルアクション要素、そして登場人物それぞれのストーリーの関係性が複雑に絡み合う原作は、多様なエッセンスを持ち、しかも長期に渡り連載され、その分量も単行本にして6巻に及ぶ。
劇場アニメーション化の第一のハードルは、この原作のストーリーを、エッセンスを損なわずにどうまとめるかということであった。今回はカスミを明確に主人公と定義づけ、それを軸にストーリーの整理を行った。複雑な作劇を、良い要素を殺さずに整合性を持って提示することは困難を極めた。数多くのプロット、準備稿を経た上でのシナリオは7稿に渡り、そのストーリー構成の完成は片山一良監督自身による絵コンテの段階まで最終的には及ぶことになった。

原作コミックと劇場アニメ版との違い

原作マンガのキャラクターや世界観のデザインは非常にスタイリッシュで素晴らしかった。だが今回の劇場アニメーション化にあたって、ハイターゲットの劇場アニメーションの客層や海外への展開を意識し、キャラクターデザイン、モンスターデザイン等各種デザインをよりリアリティのある方向にブラッシュアップを行った。
そのコンセプトのもとにキャラクターデザインは「ああっ女神さまっ」「サクラ大戦」等を手掛け、多くの劇場アニメーションにアニメーターとして参加の経験のある松原秀典氏に、モンスターデザインはフィギュアの造形の原型師であり近年は「鴉 KARAS」等アニメーションのデザインにも参加している安藤賢司氏にそれぞれ委ねられた。それに伴い建造物等の世界観のデザインや表現も、同様によりリアリティを強く意識したものとなった。
本作品を映像作品としてとして展開するにあたっては、ストーリー、デザインともに、ハードな要素とソフトな要素の織り交ざった原作マンガから、よりハードでリアルな方向のコンセプトの再定義を行うことによる、一本の映画の内容としての実在感を求められたと言える。

サンライズ プロデューサー 土屋康昌